第26回農家巡りウォーキング

~都市農業として「自分がやりたい農」を貫く姿をめぐる~

 

611日、鷺沼、有馬地区の農家3軒をスタッフ含め31名で巡りました。

 

集合場所は田園都市線鷺沼駅前の商業施設「フレルさぎ沼」。数年後にはこの周辺に宮前市民館、図書館、区役所の移転か決まっています。どんな駅前になるのかを思いめぐらせながら元気にスタートしました。


「栽培していて自分が楽しい作物をつくる」

 

「フレルさぎ沼」の裏手から急坂を下り左手にある1軒目の訪問先「FlowerVillage」に到着。大きなガラスハウスに入ると、緑の大きな葉っぱの観葉植物やここのウリの多肉植物がたくさん並んでいました。多肉植物は室内で育てられ、管理が比較的簡単でインテリアとしてもこのところ人気の植物です。

 

園主の持田浩昌さんは、7年前に家業を継ごうと就農。お父さんは主にトマト、ブルーベリーを栽培していたそうです。「アパレルの仕事から転身したんです。最初は親父の作っているトマトに取り組んだのです。

でも作っていて全然楽しくないんです。この地で農業を継ぐなら、自分がやっていて楽しいものを作りたい…たどりついたのがここにある多種多様な鑑賞用の植物でした」と話します。タネから育てるものもあり、タネをまいてから売り物に育つまで2年くらいかかるものもあるそう。

「同じ品種でもひとつひとつ色やカタチが違うんです。それが面白くて」と笑顔で話してくれました。ハウス内には壁に飾れる小さな額なども置かれ、浩昌さんのセンスの良さを感じます。多肉植物は世田谷区砧にある園芸市場に出荷もしているとのこと。

開店と同時に女性客が友達と来店してきました。ハウスは斜面に4棟ほどあり、今年は終わりというお父さんを手伝っているトマトも1棟。「多肉植物は温度管理が大切で、ハウス内の温度管理のための燃料費が大変です」と苦労話も漏らしてくれました。斜面に個性的な植物が所せましと並ぶハウスが立ち並び、なんだか宝さがしのような気持ちになり、villageの意味がわかった気がしました。

最後に「情報はインスタグラムで発信していますからぜひフォローしてくださいね」と言われました。

 

☆インスタグラムアカウント:flowervillage_saginuma


「少量栽培だからひとつひとつしっかり管理して作れる」

 

FlowerVillage」から、坂を下り、交通量が多い新246号を渡ると静かな1軒の敷地が広い戸建て中心の住宅街が広がっていました。「私、有馬に住んでいるけど、普段は広い通りを車やバスで走るから、こんな緑も残る住宅街があるとは知らなかった」と参加者の声が聞こえました。

 

2軒目の訪問先「プラチナガーデン伊藤園」は、鷺沼駅から武蔵小杉方面へのバス通りに合流した「三田橋」のバス停近くにありました。入口からの外観は地方の老舗旅館の雰囲気で、手入れが行き届いた庭木や柑橘の樹を見ながら敷地内に入ると、園主の伊藤昇さんが自宅の奥にある畑に「どうぞ」と案内してくれました。

「公務員をしていたんですが、親父が早く亡くなってしまい、定年前にここで就農しました。とにかくできる範囲で手間をかけて丁寧に作ることがモットーです。野菜は有機栽培で基本化成肥料は使っていません」と。畑にはキュウリ、トマト、ナス、ピーマンなど夏野菜が大きくたわわに実っていました。「販売は道路沿いに設置している自動販売機と決まったお客さんへの個配と自家用、そしてもうひとつは、蔵を改装し昨年開店した京料理のお店『槻(つき)』で使っています」とのことでした。

「道路を渡った先にブルーベリーの畑があります。そこも案内します」と伊藤さんに連れられ移動。10種類のブルーベリーを栽培しており、おすすめという「アーリーブルー」という品種をみんなで試食させていただきました。汗ばむ夏を思わせる中、甘酸っぱいブルーベリーで元気を回復しました。

 


「地域の様々な人たちと連携して露地栽培を大切にする農業を続ける」

 

 3軒目は、ブルーベリーの畑からバス通りを渡ってすぐの「持田ファーム」へ。

園主の持田晴朗さんはすっかり日焼けし、今朝とれたキュウリを浅漬けにして「ほら、食べて、食べて」とふるまってくれ、みんな手づかみで「おいしい、おいしい」の声が広がりました。

 茎が太くてりっぱな大玉トマトが色づいていて「家庭菜園をやっているけど、うちのトマトはちっちゃくて同じトマトと思えない」という声が参加者から聞こえてきました。

今、有馬地区では、公園の落ち葉を集め堆肥化する地域の活動が広まってきていると持田さん。「有馬町会と連携して、落ち葉堆肥を畑に入れたり、この通路にも雑草対策にひいてみたけど効果があるよ。まさに地産地消だね」と。

 持田さんは、近隣の西有馬小学校のさつまいも、大根栽培体験の受け入れ、また鷺沼駅前の惣菜店「デリスタスエヒロ」の店頭での地域野菜コーナーに出荷し、さまざまなカタチで地域と連携した農業を続けていました。

 


最後に参加者ひとりひとりから感想を聞きながら交流会を行いました。

畑を借りて自分で野菜を作っている参加者が3組いて「自分の作っている野菜との大きさの違いにびっくりした」の感想が聞かれました。

「近所に住んでいるけど、こういう農園があることを全く知らなかった。まるで小さな旅のようで楽しかった」

「初めて参加した。普段はテレワークで家にこもっている。今日はとってもいい気分転換になったし、地域を知るいい機会が作れた」といった声も聞かれました。

 

遠くは初山からの参加者もあり、多くが「秋にはまた参加したい」の声をいただきました。

また、持田ファームに来ていたJAセレサ川崎鷺沼支店の担当者から「農業の担い手不足が大きな課題」との話も聞くこともできました。